ディアブロッサ奈良は1975年に創設され現在、関西サッカーリーグ2部に所属するクラブ。昨シーズンは関西サッカーリーグ1部の全試合で得点を決めるも、全試合で失点を重ね、8位という結果に終わり、2部に降格。今シーズンは1年での1部復帰と天皇杯出場を目指す。今シーズンからGM業に専念する武田正二郎GMに奈良県のサッカーの実情について聞いた。
■Jの看板を掲げるリスク
-現在、奈良クラブがJ3の有力候補と言われていますが、奈良県で約40年間クラブを運営してきたお立場としてどのような印象をお持ちですか?
武田正二郎GM(以下、武田):サッカーをやっていて上のカテゴリーに行きたいと思うのは当然です。それが最後まで行けばJリーグになると思います。うちのクラブはそこを目指すと非常にリスキーであると思っていました。
もちろん、チームを強化したりとか、地域になお一層密着したりすることは大事ですが、トップチームに関してはお金がかなり要ります。選手をプロにするにしてもかなりの金額になります。それをどこから捻出するかとなった場合にスポンサードです。入場収入やユニフォーム、グッズ販売などは見込めないのが僕らのカテゴリーです。そうなるとスポンサードしてもらう方々にJに行きますということでお金を集めますが、非常に不安定な部分が大きいです。
「Jの看板」を掲げることは、クラブにとってマイナスであると考えるわけです。クラブとしては、育成にスタンスを置いていますので評判が良くないというのは、子どもの数に関わってくると思います。その中でトップがJ昇格を目指すことはまだできないと思っています。「必ずJに行きます」といって解散してきたクラブを今までたくさん見てきています。結局、トップだけでやっている分には限界があると思います。
■J3は穏やかな“いけす”
-やはり下部組織の充実が必要だとお考えですか?
武田:下部組織があることによって地域に根付きます。もちろん奈良クラブさんも下部組織を作ってこられましたので、これからだと思います。鶏が先か卵が先かという話ではないですが、まずは下の段階からやっていくのが本来の姿ではないのかなと思っています。
ヨーロッパのクラブの発展を考えた時に、Jリーグのように「プロサッカーリーグを作ろう」となって、できたところはないと思います。まずはアマチュアからパートタイムプロになって、それからプロになっていったのが歴史だと思いますので、その段階を踏むのが正しい姿です。ただ、日本の場合はそう言っていると、いつまでたってもプロリーグはできないので、バブルの時代にうまく乗れたというのが、Jリーグの成功だと思います。
ただ、今またそれを追い求めるのはどうなのかなと思いますし、日本サッカー協会及びJリーグにしてみれば、プロクラブが増えてくれるのは望ましいことだと思います。ただ、ある程度のところまでは各クラブが努力しないさいよと、そこから先はJ3という「穏やかな“いけす”」を作りましたよと。そのいけすの中に入ってきたい魚は、入って来なさいよと。その中でうまく育った魚はJ2に行けますが、そのJ3のいけすでうまく育たなかった選手はどうするのか。私の予想ではJリーグも日本サッカー協会も何も教えてくれないと思っています。
J3向けに集めたスポンサーを分配するという話もありますが、それはあくまでもプラスアルファのスポンサードですね。ある意味Jリーグにしてみれば何もリスクのないJ3構想かなと思います。