ブラジルの名門グレミオで、プロ選手を目指し日々奮闘している10代のフットボーラがいる。現在18歳の福島将太がブラジルに渡ったのは、2年前。中学時代を埼玉県の神威FCで過ごすが、三浦知良に憧れて単身ブラジルへのサッカー留学を選択した。
ブラジルに渡った福島を最初に驚かせたのは、サッカーという球技に対する意識の違いだった。「ブラジル人は練習嫌いと聞いていたんですが、フタを開けてみるとフィジカル練習もガチガチでした。練習も試合に近いカタチを想定していて、常に緊張感がありました。特にユースは”プロ”という環境が身近にあり、サッカーに取り組む姿勢や考え方が全く違うと感じました」
福島はボランチを主戦場にプレーしているが、当時身長が160センチ前半だった福島が身体能力に勝るブラジル人と競り合うには、基礎的な体作りから変革する必要があった。
「まず体幹を鍛えることからスタートしました。こちらに来てから毎日フェイジョアーダ(豆と豚肉を煮込んだブラジルの大衆料理)ばかり食べてるせいか、身長が2年間で10センチ以上伸びました。体も意識もブラジル化してきていますね。笑」
苦悩しながらもブラジルでの生活に歩み寄っていった福島は、ビザの関係もあり公式戦に出場は叶わなかったが、練習試合で出場機会を得ることに成功し、徐々に周囲からの評価もついてきた。一度現地の地域誌に取り上げられたこともあり、少しずつだがブラジルの地で爪あとを残しつつある。
ブラジルのグアラニー、スペインのビジャレアルCFでプレーし、現在アジア・中東地域のスカウトも勤めるMP SPORTS社のエグゼクティブディレクターのルシアーノ・ノロンハは福島の将来性に太鼓判を押す。
「ブラジルはサン・パウロFC、コリンチャンスといったビッククラブのユースでも各世代20人程度しかプロ契約に至らない狭き門です。ただそんな中でも、ブラジル人と比較しても将太は適応力と判断力が素晴らしい。ボランチのポジションで両足を使えるのもグッドです。あと2年頑張れば、プロも見えてくるレベルだと思ってます」
そんなルシアーノの評価に福島も「自分1人なら無理かもしれませんが、ルシアーノと一緒ならプロになれると思っています。選手としての自信が揺らぎそうになった時、プロの先輩としても自分を後押ししてくれる存在です」と話す。
「中学時代は、海外に行けば何かが変わると思っていたんです。自分を変えたいな、と。実際ブラジルに来てみて、主張することの大切さも肌で感じることができました。だから、語学のマスターのための努力もできました。アピールしないと、パスももらえない。そんな環境でプレーできていることは、必ず今後の人生に活きてくると思ってます」力強い握手を交わし別れた後、流暢なポルトガル語を操り、身振り手振りを交えながらブラジル人と議論する福島の姿がしばらく脳裏から離れることはなかった。
この内容の書き下ろしが「南米と日本をつなぐ者達」(ギャラクシーブックスより6月頃出版予定)に収録されます。
(文・写真 栗田シメイ Twitter:@Simei0829)